2022/07/29
2022年版NFT業界カオスマップ
昨年発表し、好評いただいた「NFT業界カオスマップ」の2022年度版を作成しました。NFT業界を「インフラ」「発行」「流通」の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて概説でご紹介していきます。
※2021年NFTカオスマップ(業界地図)と事例紹介①
※2021年NFTカオスマップ(業界地図)と事例紹介②
※2022年NFT業界カオスマップPDF版ご希望の方はお問い合わせよりご連絡ください。
鮮明な図表とそれぞれのサービス、ツールのリンク付きでご紹介しています。
1.インフラ
■ ブロックチェーン
ブロックチェーンを用いることでNFTは唯一無二であることの証明と資産的な価値を付与することが可能である。そのブロックチェーンの中でもEthereumは現在に至るまで代表的なポジションを維持しているが、一方、NFTの発行や売買のコスト(ガス代)などを背景に様々な代替チェーンも登場している。その中でPolygonはEthereumと互換性を持ち、最近サービスでの利用が増加、Solanaは処理の高速さとコストの低さでEthereumに変わるブロックチェーンとして注目されている。FlowはNFTに特化したブロックチェーンとして、WAXはゲーム、NFTに特化したブロックチェーンで、処理速度の速さとコストの安さが売りとなっている。BNB ChainはBinanceが開発・運営するレイヤー1ブロックチェーンで、Ethereumに続く人気と実績を持ち、Ethereum上のdAppsと互換性があること、独自のコンセンサスアルゴリズムPoSaを実装することでEthereumブロックチェーンの5倍の処理速度を持っている。そして、日本発のブロックチェーンであるPaletteもNFTを主な用途とし、Ethereumとの互換性を持っている。
■ 開発標準化ツール
NFTの定義を満たすデジタル資産をブロックチェーン上に作る際、エンジニアがゼロから作成することはあまりなく、一定の規格に沿ったテンプレートにパラメータを与えてNFTを生成している。そのインフラとなるツールの代表例として、OpenZeppelinはEthereumの中でも最も代表的でNFT標準となるERC-721等のテンプレートを提供している。0xcertは簡単にNFT等を作成できるAPIを提供しています。その他にもORIGINやENJINなども同様にインフラとして支えているツールと言える。これらはNFTの標準化に大きく貢献している。
■ メディア・エクスプローラー
プロジェクトやマーケットプレイス横断でのNFTの検索やトレンドを知るために用いることができるサービス。NFT Price FloorはNFTのフロア価格が一覧でわかるようになっており、NFTGoにおいては取引や保有者状況など、データ分析も豊富に用意されている。NFTBANKはウォレットと連携可能で投資ポートフォリオ管理にフォーカスしている。Rarity SniperやNonFungibleはエクスプローラーの他、メディアも運営している。日本発のNFTについて調べたい場合には、NFTRANKING.JPでは日本発のアートコレクションがランキングされている。
■ NFTFI
NFTの金融面に焦点を当てたプラットフォームやツール。NFTXは様々なNFTプロジェクトに流動性を与えるマーケットプレイスであり、暗号資産との組み合わせでNFTを利用した投資を可能にしている。BendDAOではNFTを担保とした金融取引を行うことができ、Dropsはメタバースアイテムを担保として融資を受けることが可能。
2.流通
■ 一般
NFTマーケットプレイスではNFTの一次・二次流通が可能であり、固定価格やオークション形式で売買されており、ビジネスモデルとしては販売手数料を徴収して収入源とするのが一般的となっている。OpenSeaは業界の世界的なデファクトスタンダードとなっているが、X2Y2やLooksRare、Raribleなども一時、注目すべき取引高シェアを示した実績があり、LooksRareは経済的な性格の強い独自トークンや取引高に応じて取引者に報酬を配布するシステムを実現したことで、ローンチの時にはOpenSeaの数倍となる取引高を記録した。日本発のパブリックチェーンに対応したマーケットプレイスとしては、SBINFTやAdam byGMO、Coincheck NFT、NFTStudioなどがある。
■ まとめ買い
宿泊施設や航空券の予約をまとめてできるサービスがあるように、NFTマーケットプレイスにも同様のサービスがあり、GenieやGemはその代表的なサービスとして複数のNFTを横断してまとめ買いできるシステムが用意されており、ガス代の節約にもなっている。
3.発行
■ PFP/アバター
PFP(Profile Pictures:プロフィール画像)やアバターは最も流行ったNFTの用途の一つといえる。CryptoPunksは先駆けであり、元々PFPとしての用途は想定されていなかったが、SNSのアバターとしての利用が広まった。Crypto Punks以外では、2021年のNFTブームの火付け役ともなったBored Ape Yacht Club(BAYC)や、DoodlesやAzuki等も有名。日本発ではmetaani、Neo Tokyo Punks、Ninja DAO等がある。
■ ファッション
流行に敏感なファッション業界では、先んじてNFTを取り入れるところもあり、GucciやNike、adidasの取り組みが話題になった。また、BAYCに影響を受けたHAPE Primeでは類人猿の3Dをモデルにストリート系ファッションを中心としたデジタル・ファッションを展開したり、Kith FriendsではNFT購入者へ購入したNFTが着用しているファッションが提供される特典を付けるなど、ファッションとNFTの新しい取り組みが始まっている。
■ アート/美術品
アートもNFTの主要な用途となっており、SuperRareやFoundation、Nifty Gateway、knownorigin、MakersPlaceはアートに焦点をあてたNFTマーケットプレイスの代表例となっている。これらの特徴として、NFT自体は誰でも作成できるものの、有名あるいはポテンシャルのあるアーティストの選定と育成に注力していることが多く、伝統的なギャラリーのビジネスに近くなっている。
■ 音楽/ビデオ
音楽分野ではSound.xyzやAudius、Royalなど様々なサービスが展開されており、NFTの特性を活かし、購入者に音源の共同所有権や会員制コミュニティへの参加権、観覧席を与える取り組みもある。伝統的な配信プラットフォームに比べて、アーティストへの還元も重視される傾向がある。Theta.tvではストリーミング動画の視聴者へ暗号資産を配布するシステムがあり、NFTのエコシステムも増設される予定がある。
■ 自動生成アート
デジタルアートならではの唯一性とランダム性を持つ自動生成アートにもNFT化の動きがある。作成者(主催者)は「スタイル」だけを決め、そのスタイルを気に入った人がNFTを生成するという流れが多い。生成されるNFTの内容は一定のルールに沿ってランダムに生成されるため、生成結果は作成者(主催者)すら事前に予測できない。art blocksやGEN.ARTを訪れると、多彩な自動生成アートとそのコミュニティを探索できる。
■ ゲーム
NFTでは一大ジャンルとなっているゲーム。絶大な人気のあるAlien Worldsは独自の経済システムや複数のチェーンそれぞれに定められたゲーム/メタバースシステム、分散型自律組織(DAO)を持つ。Axie Infinityも独自の世界観を持ったゲームで、NFTマーケットプレイスが併設されている。Sorareはサッカーや野球のプロ選手のカードNFTを使ったゲームであり、こちらも人気が高い。その他にも、Faraway、Loot、Sunflower Land、Decentral Gamesも人気がある。ゲームでのNFT活用においては、NFTが特定のゲームの参加権を表すこともある。
■ メタバース
多くのメタバースでは構成要素としてNFTの存在が前提になっている。Decentraland、The Sandbox、Voxels、nft worlds、Somnium Spaceなどが代表例であり、メタバース内の「土地」を含めた「モノ」がNFTとして扱われる。OthersideはBAYCから派生したメタバースである。
■ スポーツ
スポーツ分野でもNFTを活用したサービスが進んでいる。NBA選手のトレーディングカードをNFT化して一躍人気が出たNBA Top Shotはその最たる例であり、マーケットプレイスも併設されている。同様に米メジャーリーグのトレーディングカードを扱うTopps NFTsも話題だ。トレーディングカードの購入以外では、Autographでは有名スポーツ選手のサインをNFT化して販売している。また、Sociosは「ファントークン」を購入することでチームの決定に関する投票券を得ることができる仕組みを作り、「ファントークン」を持っていることでチケットなどの優遇を得ることができるなどの特典も持たせている。日本でもサッカーJリーグを題材にしたPlayers Anthemが楽天NFT上で展開している。
■ エンターテイメント
NFTはエンターテイメント界でも利用され始めている。Curioは米ユニバーサル・ミュージック・グループがNFT事業参入に際し提携したことでも話題になったエンタメ、ミュージシャン向けのNFTプラットフォームである。日本では、SKE48の写真等をコンテンツ化したNFTトレカや、テレビ朝日系列の番組やキャラクターに関するNFTプロジェクトが多く紹介されているepioがある。
■ PASS/会員証
PROOF CollectiveはNFTの会員証としての機能に焦点を当てたプロジェクトであり、1,000個限定で発行されたPROOF NFTの所有者のみが限定Discordコミュニティやイベントへ参加することができる。PREMINTはNFT発行の際に使われるアクセスリストの作成を主な目的としたプロジェクトで、PREMINT Collector Passの保有者は早期に限定情報にアクセスできるほか、他に保有するNFT等の一定の条件を満たすと、特定のNFTプロジェクトのアクセスリストに掲載されたり、優先購入権が付随するなど、投資商品とも捉えられる。
■ 認定
NFTは認定にも利用される。POAP(Proof of Attendance Protocol: 参加証明プロトコル)はその名の通り、イベントの参加者に配布されるNFTのプロトコルである。各NFTはバッジのような画像で表される。Project Galaxyはもっと包括的なデジタル認定証のソリューションを目指しており、実例としては「AAVE Borrower on Ethereum」といったDeFi関連のものもあれば、「OpenSea Legend Buyer」という認定証もある。
■ ドメイン
分散型ネットワークのドメインもNFTとして取引され、複雑な暗号資産のアドレスを簡単な文字列に置き換え、ブロックチェーンドメインを作成することができるサービスが提供されている。ウォレットやウェブサイトの名前を分散化するENSや、Unstoppable Domainsもブロックチェーンドメインの取得が可能だ。
■ X2E
何かしらの活動に対して報酬を得るシステムとしてNFTを活用するものがあり「X2E(X to Earn:~で稼ぐ)」というワードが誕生した。こうしたプロジェクトでは、通常トークンエコノミーが構築される。ブロックチェーンゲームにおける”Play to Earn”もこの一種である。「X to Eran」の代表例であり、この言葉が誕生するきっかけにもなったSTEPNは、2022年上半期最も話題になったもののひとつだろう。STEPNでは仮想上でNFTのスニーカーを保有し、現実世界で歩いて距離を稼ぐこと(“Move to Earn”)で暗号資産を得ることができるとして多くのユーザーを獲得した。その他の例として、CrypNoteはノートや記事などの執筆活動に対して報酬を与える”Write to Earn”、LetMeSpeakは英語の学習活動に注目した”Play, Learn and Earn”を謳っている。NFTは参加権としてこのようなプロジェクトに活用されている。