2021/12/21

カーボンニュートラルの実現へ② 非電力分野におけるブロックチェーン活用例の紹介

1. 前書き

気候変動という世界的な課題に応えて、多くの国や地域では、将来的にCO2排出量の「実質ゼロ」を達成することを約束している。前編では、「脱炭素化とカーボンニュートラル」「エネルギー分野におけるブロックチェーンの適用」について説明した。本編はこのシリーズに続き、エネルギー業界中での非電力分野における各国のブロックチェーン取り組みについて、いくつかの事例を紹介する。

2. 非電力分野における各国のブロックチェーン活用例

経済産業省の調査によると、世界では、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、大胆な投資をする動きが相次ぐなど、気候変動問題への対応を「成長の機会」と捉える国際的な潮流が加速している。世界中のビジネスや金融市場も、その潮流の中で大きく変化している。カーボンニュートラルへの挑戦は、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出すチャンスと言えるだろう。以下に、各国の典型例を挙げながら、非電力分野における各国のブロックチェーン活用例を説明していく。

2.1 (中国)「脱炭素化活動」ビジネスモデル

炭素排出枠の分配市場と炭素排出削減の市場とは異なり、カーボンインクルージョンは消費側(生産側ではなく)からの排出削減を促進し、基本的には、一般市民が環境に配慮した低炭素な行動を行う為の積極的なインセンティブである。カーボンインクルージョンは、主に中小企業、コミュニティ、家庭などを対象として、低炭素の知識を広め、生活に活かすことで、社会全体で低炭素での消費を促進することを目的としている。そして、カーボンインクルージョンは、国民のグリーン及び低炭素型の行動を定量化し、ビジネスインセンティブ、政策奨励、及び認証排出削減量の取引を組み合わせたポジティブな発展に寄与していきたいと考えている。理論的には、グリーン及び低炭素型の活動に参加することにより、国民は一定の排出削減量を直接獲得し、排出削減量の販売で収益を得ることができる。しかし、国民がカーボンインクルージョンに参加することによって得られる認証排出削減量は比較的小さいため、カーボンインクルージョン市場での直接取引には適していない。したがって、より適切な解決策としては、カーボンインクルージョンエコシステムを生成し、一般市民の認証排出削減量を集約し、販売することである。主なプロセスを次の図に示している。


HashKey DXによる作成

2.2(スイス)Poseidon社の「reduce」プロジェクト

現在、PoseidonではAIとブロックチェーンを使用して、あらゆる製品またはサービスのカーボンフットプリントをすばやく分析し、カーボンクレジットを処理している。


出典:Poseidonホームページ https://poseidon.eco/solution.html

上の図に示した通り、仕組みとしては次のとおりである。
商品が製造・販売される時に使用されるエネルギーとリソース及び材料の組み合わせは全て製品の「カーボンフットプリント」である。そのエネルギーやリソースの量が確定すると、同量のカーボンクレジットを購入できる。

小売業者を例として、説明すると:

① 小売業者は、Poseidonと共に製品のCO2排出量を計算することで、新たに持続可能性を実現できるサプライヤーを明確にすることができる。
② 小売業者にとっては、自動的にカーボンフットプリントをリバランスできる製品を選択できることで、消費者(顧客)に対しても積極的に気候変動対策に取り組むという目標を達成することができるようになる。

2.3(カナダ)Carbon X社の「Zerofootprint®」プログラム

Carbon Xは、炭素削減プロジェクトへの投資を創出することにより、低炭素世界経済への変革を推進するように設計された環境ソフトウェアにおけるフィンテック企業である。2019年、Carbon XはZerofootprint®と合併した。Zerofootprint®プログラムは、カナダと米国で特許を取得したデータ収集と、特定の製品ライン、デバイス、サービス、または投資に対する企業の温室効果ガス排出の集計を開始した。そして、Carbon Xは、カーボンニュートラルにおける顧客の新しい目標設定を支援するため、Zerofootprint®証明書を授与している。

具体的なメカニズムとしては下図に示した通りとなっている。


出典:Carbon Xホームページ https://www.carbonx.ca/#zerofootprint

① クリエーション:CarbonXが認定したカーボンオフセットを購入する。
② アナリシス:CarbonXは、特許取得済みの方法を使用して企業の過剰排出量を計算する。
③ オフセット:企業はZFPオフセットを購入する。
④ リタイアメント:CarbonXはオフセットを廃止する。
⑤ サーティフィケーション:CarbonXは、一定期間でその会社に認証を提供する。
⑥ マーケティング:CarbonXはリアルタイムにトランザクションのフィードバックを提供することで、企業の利害関係者がカーボンニュートラルにおける主張を検証することができる。

2.4(イギリス)Energi Mineから発行されたEnergi Tokens

Energi Mineはイギリスのマンチェスターに本社があるAI + Blockchainの会社で、エネルギー問題解決のためのプラットフォームを運営し、省エネ活動に努めると共にユーザーにEnergi Tokensを与えている。


出典:Energimine ホームページ https://energitoken.com/

上の図のEnergi Tokens(ETK)はEnergi Mineによって発行され、2017年11月17日にトークンセールを開始した。ETKは、公共交通機関の利用、エコ商品の購入、電気自動車の購入などの省エネ活動によって獲得され、を家庭の光熱費の支払いや、P2P取引所での取引に使用したりすることもできる。同社は世界中の政府、政党局、エネルギー企業と協力し、地球資源の節約に努めている。


出典:Energimine ホームページ https://energitoken.com/

Energi Mineのエコシステムは、消費者と生産者が互いに直接対話できるようにするP2Pマーケットプレイスで構成されている。ただし、このソリューションが他社の商品と違うのは、すべての取引がデジタルトークンを介して行われ、取引は元帳に直接記録されるため、すべての金銭的取引が常に会計処理される仕組みとなっている。

2.5(オランダ)「The Eco Coin」社から発行されたEco Coin

木を切って売るとお金になるが、木を植える時点ではお金を得ることはない。The Eco Coin社が発行するECOコインは、こうした持続可能な活動をしている世界中の誰に対しても報酬を与えることを目的としており、持続可能な行動を通じて獲得される暗号通貨である。食事を肉食から野菜に変えたり、グリーンエネルギープロバイダーに切り替えたり、自転車での通勤にするなど、エコ活動を行うことで持続可能な市場(エコロジー体験、サービス商品購入など)で使えるECOコインを獲得できる。いわば、1枚のECOコインが1本の木を支えているともいえる。こうしてより多くの自然資産、グリーン資産がエコシステムに追加されることで、より多くのECOコインが利用可能になるのだ。具体的なビジネスモデルは下の図で表される。


出典:THE ECO COIN-WHITE PAPER V1.0

上の図ECOマーケットプレイスのメカニズムについて解説すると、

① 組織は、法定通貨でECOを購入したり、ECOと樹木を交換したりをすることで、持続可能な行動を促進する。その後、ECOコインはECOコイン財団によってリリースされる。
② 組織は、購入したECOを使用して、持続可能な行動の実行にインセンティブを与えるため、短期または長期のキャンペーンに人々を参加させる。ECOを獲得した参加者(個人)はベンダーから直接商品を購入することもできる。
③ ECOを獲得した個人は、市場のどのベンダーからでも持続可能な体験、サービス、製品を購入できる。
④ ECOは、ベンダーが新しい持続可能な行動にインセンティブを与えるために使用したり、他のベンダーと取引したり、デジタルECOウォレット内の優先広告およびコミュニケーションスペースを購入するために使用することができる。

3. 終わりに

2015年12月、各国はパリ協定で、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを約束した。日本でも2020年、当時の菅総理大臣により2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言している。「カーボンニュートラル」の目標は、今世紀後半に実質ゼロ排出量を達成することである。各国は今後、炭素排出削減の目標、すなわち「国が決定する貢献(NDC)」を設定し、5年ごとに排出削減の進捗状況を更新していくことになっている。

本稿は本シリーズの中編として、エネルギー領域、特に非電力分野における各国のブロックチェーン活用例を説明した。後編では、電力分野に着眼して「エネルギー分野におけるブロックチェーンの活用」に関するカオスマップを含め、具体例を詳しく紹介していく。

 

 

 

Share

HashKey DX Magazine トップへ戻る