Filecoinエコシステムの紹介

目次:

  1. Filecoinエコシステムとは

  2. アプリケーションとクライアント

  3. Filecoinのインフラ

  4. コラボレーター

  5. 投資機関とアクセラレータ


1.Filecoinエコシステムとは

<急拡大するFilecoinエコシステムとは一体何か?>


 Filecoinは重要な情報を保存するために設計された「分散型ストレージネットワーク」で、分散型ストレージビジネスにおけるWeb3.0のビジョン実現に多大な貢献をしてきた。

2020年10月15日にFilecoinメインネットが公開されてから1年が経った今、Filecoinエコシステムは急速に拡大している。本稿では、読者にFilecoinエコシステムについて理解を深めてもらうため、このエコシステムについて徹底解説していく。



<Filecoinエコシステムの概要>


 詳細説明に入る前に、まずFilecoinエコシステムの概要を見てみよう。下記の図は2021年7月に発表された「Filecoin Ecosystem Grid」になる。


2021-06-30 Filecoin Ecosystem Grid


アプリケーション、組織、企業、機関などが分類され、エコシステムマップにリストとして掲載されている。これらのマップ分類より、下記に沿って解説していく。

  • アプリケーションとクライアント

  • Filecoinのインフラ

  • コラボレーター

  • 投資機関とアクセラレータ


2.アプリケーションとクライアント


 上記のエコシステムマップをもとに、データ市場に関連するアプリケーションとデータサプライヤー(クライアント)について説明する。


2.1ストレージ/データ市場


 Filecoinエコシステムの一部であるストレージ/データ市場とは、ストレージスペースプロバイダー(マイナー)、データサプライヤー(クライアント)及びデータユーザーの間で市場を構築することを意味する。ストレージ/データ市場が成長すると、データ自体が世界にFilecoinのネットワーク価値を反映できるようになる。


・消費者向けのストレージアプリケーション:Filecoin上に構築されたオープンソースストレージシステムを指す。具体例:slate, space, ChainSafe Files


・レピュテーションシステム:レピュテーションは、効率的な市場にとって不可欠な要素である。人々は、取引開始前に、取引相手の質と信頼性を評価する方法を持っている必要があり、Filecoinも例外ではなく、分散型マーケット及びエコシステムとして、ユーザーの様々なニーズをサポートするため、Filecoinには複数のレピュテーションシステムがある。また、ネットワーク効率を高め、高品質なサービスを促進することに加え、Filecoinの多様で分散化された評価システムもセットすることで、ユーザーの新たなニーズをサポートしている。具体例:digital.MOB, textile, Figment


・データマーケット:Filecoin上のデータマーケットプレイス。データ処理ツールとFilecoinの分散型ストレージデータベースにより、オープンデータエコノミーが誕生している。具体例:WOLFRAM, ocean protocol, Filehive, Ownership Labs


・検索市場:ユーザーはアプリケーションのPOP(Point of Presence)を実行し、Filecoin及びIPFSでコンテンツを配信するための報酬を受け取ることができる。具体例:Myel, CONSENSYS, NBFS


・検証可能なストレージとプライバシー:新しい暗号化、コンセンサスプロトコル、及びゲーム理論上のインセンティブを使用して設計されたFilecoinプロトコルは、クライアントとマイナーが自信を持って使用できる分散型ストレージネットワークとマーケットプレイスを提供する。そのすべての中心にあるのは、ストレージ検証に対するFilecoin独自のアプローチである。具体例:*starling, POWERLOOM, Small Data Industries, numbers, NuCypher


・アーカイブデータセット:アーカイブデータセットは、多くの場合、損失リスクのある重要な情報へのオープンアクセスを管理、配布、及び維持するように設計されている。具体例:INTERNET ARCHIVE, KIWIX, congress.ai, FilecoinDiscover


2.2 データサプライヤー(クライアント)


 Filecoinにデータを保存するクライアントのために、ブロックチェーン/Web3.0関連の新しい商用サービスと従来のサービスの2つの側面について説明する。


 ブロックチェーンの成長に伴い、新しいビジネスモデルも登場している。2021年には、NFTとDefiの2つが注目を集める市場となり、、MetaverseとDID(分散型識別子)も爆発的に増加している。これらの新しいサービスをFilecoinと組み合わせて、Web3.0アプリケーションを実現する方法を下記にまとめた。


・NFTs:①Filecoin上に構築されたNFT市場、②NFTがIPFSとFilecoinで保存したプラットフォーム。具体例:NFT STORAGE, CURIO, MintGate, Flame, Kanon, ZORA, Jigstack, Block Rocket


・分散型識別子(DID):DIDは通常、公開鍵などの暗号材料や、安全な通信チャネルを確立するためのサービスエンドポイントと関連付けられ、個人の識別子、組織の識別子、Internet-of-Thingsの識別子など、自分で管理できる暗号的に検証可能な識別子を必要とするあらゆるアプリケーションに有効である。具体例:ION, Ceramic Protocol, Vera AI,civic


・DeFi &ファイナンス:DeFiの信頼性と範囲が拡大し続けることで、重複するエコシステムのプロジェクトが集まり、金融の世界にさらに革命をもたらす新しい革新的なツールを開発。具体例:Codefi, Secured Finance, parcel, CANZA, endowl


 従来型のウェブサービスを提供するIT企業の多くは、通常ストレージに一元化するローカルサーバー、もしくはAWSやAzureなどのクラウドコンピューティングサービスプロバイダーを使用し運営しているが、データをより合理的かつ安全に保存するために、これらへの投資に日々頭を悩ませている。しかし、Web3.0となるアプリケーションでは、従来のデータストレージから脱却し、Filecoinのような分散型ストレージの利用へと変化してきている。では、従来のITサービスがFilecoinを使用してデータ管理を改善し、Web3.0に向けて新たな一歩を踏み出すためにはどうすべきか?下記に例として、ビデオ、ゲーム、医療、教育分野での事例を紹介する。


・ビデオ:Filecoinネットワークを利用したオープンソースの分散型かつ、検閲に強いビデオホスティングソリューション。具体例:Livepeer, VideoCoin, AUDIUS, Livetree, file.video, Voodfy, HUDDLE 01


・ゲーム:ゲームの創造的なエコシステムと暗号通貨の分散化された世界を橋渡しするゲームプラットフォーム。具体例:_dLabs, OPgames, NONENTROPY


・医療:Filecoin / Web3.0分散型ストレージテクノロジーは、医療データのプライバシーとセキュリティを保証する。具体例:SINSO


・教育:大手暗号資産メディアのDecryptが、Decrypt Tokenをローンチし、ローンチパートナーにはFilecoinが選ばれており、共にDecrypt Tokenの普及活動を行なっていく予定。具体例:Decrypt



3. Filecoin関連のインフラ


3.1プロトコルの実装


 Filecoinのプロトコル実装には、ネットワークの安定性を保護するのに役立つ4つの独立した実装プロトコルがある。4つの実装については次のとおりである。


  • Lotus、現在最も成熟した実装であり、メインネットでも使用されており、Protocol Labsによって作成された。

  • Venus(旧go-filecoin)は現在IPFS Forceで管理されている。

  • Fuhonはソラミツによって開発された。

  • ForestはChainsafeによって構築されている。


 Protocol Labsによると、ブロックチェーンの構築は例えて言うならば、ロケットやロボットを組み立てるかのように、さまざまなパーツや多くのソフトウェアを組み合わせて構築されている。Protocol Labsではプロトコルおよびソフトウェアの実装が安全であることを保証するためプロトコルセキュリティチームを持っており、実装のためのセキュリティ監査、外部セキュリティ監査を実行し取り組んでいる。しかしながら、システムと個々のノードを保護するためにどれほど懸命に取り組んだとしても、バグなどがネットワークに悪影響を与える可能性は常にあるのだ。


 そこで、同じネットワーク上で相互運用する複数のソフトウェアが実装されれば、このリスクが大幅に軽減されると言える。したがって、複数の実装で暗号通貨ネットワークを起動すると、Filecoinネットワーク全体に悪影響を及ぼしたり、ダウンさせたりする可能性のある壊滅的なバグの可能性が減少する。


 複数の実装には、異なる開発者コミュニティとのエンゲージメントを高める機能や、様々な実装アーキテクチャ(様々なパフォーマンスやその他の最適化を提供する可能性がある)を探索する機会など、いくつかのメリットが与えられている。例えば、イーサリアム、GethとParityが立ち上げられてからは、複数のソフトウェア実装で立ち上げられるブロックチェーンネットワークの数が増えていることが挙げられる。


3.2ネットワークの可視化


 ネットワークの可視化については、Filecoinブロックチェーンエクスプローラー及びデータサービスプラットフォームがあり、様々なマイニングランキング、データクエリ、統計チャート等、Filecoinに基づくデータをワンストップで探すことができるサービスを提供しており、それらのデータにより業界動向について把握することが可能となっている。


具体例:Filfox, FILscout, Filscan, FiLBOX


3.3ブラウザ


 ブラウザはWebへのゲートウェイであり、特に次世代のインターネット(Web3.0)では洗練されたブラウザが必要である。一部のブラウザは、デスクトップ、Android、iOSモバイルのすべてのブラウザプラットフォームでIPFSと「コンテンツベースのアドレス指定」をシームレスに有効にする。ブロックチェーンベースのドメインは、サードパーティではなく、コンピュータの分散型ネットワークからユーザーのファイルを取得する。


具体例:Brave, Opera


3.4開発者インフラストラクチャ


 前述した以外では、高可用性APIスイートがあり、開発者ツールはFilecoin / IPFSネットワークへ迅速で信頼性の高いアクセスを提供することができるため、開発者は下記にあるような次世代ソフトウェアの構築とスケーリングに集中できる。


具体例:INFURA, fleek, CLOUDFLARE, Pinata, Protofire, ChainSafe, eternum, the graph, Figment Network, ENS, Kotal.



 Pinataを例にとると、ユーザーがNFTメディアを簡単に保存及び管理できるようにするため、PinataはFilecoinと協力して、NFT用の分散ストレージサービス(NFT.Storage)の提供を開始している。


 NFT.Storageは、Filecoin及びIPFSテクノロジーによって支えられ、IPFSテクノロジーを使用することで、コンテンツのIPFSハッシュ(コンテンツ識別子又はCIDと呼ばれる)を作成できる。また、CIDを使用して世界中のIPFSノードでホストされている対応するファイルを見つけることができる。この方法により少なくとも1つのホストがファイルへのアクセスを提供している限り、NFTに添付されているファイルを常に見つけることができる。Pinataのウェブサイトによると、このサービスでは「NFT用に安全で検証可能なファイル」を提供しているという。ユーザーはPinataを介してコンテンツをアップロードし、NFTを作成、発行する前にIPFS CIDをNFTに添付する。


3.5開発者ツール


 Filecoinネットワーク上での構築を簡単にする基盤となるテクノロジーとAPIの堅牢なセットをアプリケーションで使用できるようにするため、Filecoinは様々な企業(TRUFFLE, fission, Orbit db, NETHEREUM, Valist, INFINITE SCROLL等)と協力して一連の開発ツール(例えば、Textileという開発者ツール、APIによるクライアント&保存サービス、開発者がFilecoin上で構築するために使用できるツールなど)をスタートさせている。


 例として挙げると、ファイル配信にIPFSを活用するWebネイティブアプリの公開ツールであるFissionは、React、Vue、Elmなどの既存のフロントエンドフレームワークをサポートするだけでなく、ユーザーアカウントを使用してサイトや双方向型のWebアプリを運営することができる。


3.6トークンインフラ


 「トークン化」とは、資産のデジタル化である。各トークンは、基盤となるインフラプロジェクトの一部の所有権を表す。ブロックチェーンは、これらの暗号化トークンの保存と転送を可能にする。Filecoinについては、ウォレットスケールの問題に対処しながら、取引コストの削減、透明性と流動性の向上、代替資本へのアクセス、分散化、効率の向上など、幅広いメリットを提供している。以下ではウォレット、トークンインフラの一部が挙げられる。


・ウォレット:METAMASK, Ledger, Glif Wallet, Trust Wallet, imToken, coinomi, Math Wallet


・ウォレットとトークンのインフラ:Zondax, P2P VALIDATOR, NodeFactory, Token Terminal


 METAMASKはブロックチェーンの主要なWebウォレットであり、dAppとWeb3サイトを作成するための新しいFilecoinベースのプロジェクトであるMetaMaskSnapsは開発者の興味を惹きつけている。このMetaMaskSnapsは、今後のMetaMaskSnaps拡張性システムのプロトタイプを介したFilecoinの基本的なサポートを含む特別な開発者向けのリリースバージョンである。Filecoin開発者がFilecoinを使用するWeb3サイトの構築を開始できるように、このディストリビューションを利用できるようにしている。このビルドにはFilecoinSnapがプリインストールされているが、コンシューマーがFilecoinによるサイトに接続するときに、接続フローを介してSnapプラグインをインストールする。現在から製品リリースまでの間に重大な変更が行われる可能性がある。これらを定期的に伝達するために最善を尽くしている。


・支払い:現在、ユーザーは一部のアプリで多くの新しい暗号通貨を保持して取引することができる。これらのサービスは、Filecoinネイティブトークン(FIL)での決済に対応している:Revolut, Travala



4.コラボレーション


 ①研究協力者:Filecoinリサーチの目的は、分散型ストレージネットワークであるFilecoinの実現成否に関する試金石を設計または構築することである。Protocol Labsは、Filecoinの構造が正しいことを証明するため、もしくはそれらを改善するために機能している。Filecoinの研究作業は重点分野ごとに実施されており、現在の取り組みは下記に挙げる分野で進行中である。


  • Specs:Filecoin Specsは、研究とFilecoin開発の間の主要なインターフェースである。研究作業は、仕様に組み込まれて初めて完了する。

  • General Research:このリポジトリは未解決の問題をFilecoin Researchで再グループ化し、調査作業の整理に役立てる。

  • Proofs:Filecoin Proving Subsystem(FPS)の形成と構築に役立つ。このサブシステムのAPIは、Filecoinノードから呼び出してセクタをまとめたり、PoSTを生成することができる。

  • Consensus:Filecoinの構造を完成形にすること、またコンセンサスプロトコル(マイナーが新規ブロックを採掘し、Filecoinブロックチェーンを延伸するためのリーダー選抜において利用される)の安全性を証明することを担っている。


 既存領域における研究の継続と新規領域へと研究を進めていくため、Protocol Labsではスタンフォード大学などと協力し、Filecoinの研究開発に注力している。研究開発協力機関の一部は以下のとおりである。


 ②大学:The Stanford Center for Blockchain Research, VIENNA UNIVERSITY, PURDUE UNIVERSITY, ILLINOIS UNIVERSITY, The UNIVERSITY of VIRGINIA


 ③共同研究機関:Supranational, IC3, IMDEA software, Carbon Five, Block Science, cadCAD, LIGERO, Starboard Ventures, keyko, MOB


 ④エコシステムの参加者:Filecoinネットワークはエコシステム指向であり、モジュール化のソリューションを構築するProtocol Labsの方針と一致している。他者が使用するように設計されたFilecoinは、Web3内の他のスタック、アプリケーション、及びエコシステムとも適合