DeFiの重要な仕組みを詳しく解説

DeFiの重要な仕組み


分散型金融(以下、DeFiと表記)という名前が生まれる以前から暗号資産は存在しており、分散型取引所(以下、DEXと表記)もイーサリアムネットワーク上に当初の段階から存在している。昨年大きな話題になっているのは、既存の金融システムを組み合わせた「イールドファーミング」や「流動性マイニング」と呼ばれるしくみを使ったサービスが生まれたことがきっかけかもしれない。本章は、DeFiの成功に不可欠な5つの仕組みを説明する。


1. スマートコントラクト


スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組みを指す。イーサリアムなど多くのパブリックブロックチェーンにはスマートコントラクトが実装されていて、DeFiのほとんどがスマートコントラクトを利用する。契約条件がコンピューターのプログラミング言語で実行されることが、スマートコントラクトのもっとも重要な機能だ。これまで人の手を介して行われる多くのプロセスが、自動化されて、より速く安全に契約が実行されるので、契約者間の様々なリスクの軽減が可能だ。


一方で、コンピューターのコードにバグが発生して、脆弱性を有する場合があるので、スマートコントラクトに重要な機密情報を書き込むことにはリスクが伴う。


その履行履歴は、P2P のブロックチェーン上に記述されるため、契約の透明性が確保されているのが特徴だ。加えて、暗号資産の非中央集権性も有しており、サービスの管理者が存在しなくても、契約者同士の取引に基づく資金移動が自動処理される。このようにスマートコントラクトは、当事者間で交わされる契約書の締結など多くの作業が不要になるため、事務コストを削減できる。


2. ステーブルコイン


2.1 ステーブルコインとは


ステーブルコインは、日本円や米ドルといった法定通貨、あるいは金やダイヤモンドなどの現物資産の価格と連動することで、価格を一定に保てるようにした暗号資産である。暗号資産はボラティリティが高いため、暗号資産の取引や利用を敬遠する個人や企業は少なくない。このボラティリティが高いという暗号資産の特徴を打ち消し、価格変動が安定した暗号資産として、ステーブルコインは組成された。例えば「Tether(単位:USDT)」では、交換レートは1ドル=1USDTと米ドルにペッグされており、1USDTは常に1ドルへと換金できるように設計されている。


(出典:The Block)


2.2 ステーブルコインの機能


価値の交換:通貨を使用して商品やサービスを購入

価値の尺度:商品やサービスの価格を表す

価値の保存:通貨そのものの価値を維持保存


暗号資産は24時間365日、絶えず価格変動するため、「価値の保存」の機能を有していない。そのため、従来の暗号資産のような値動きでは使用が難しい。


ステーブルコインは、暗号資産の「価値の保存」の機能を有しない課題を解決するために開発され、暗号資産のボラティリティを抑えることを目的に設計されている。通貨そのものの価値は主要国の法定通貨のようにほとんど変わらず、ブロックチェーンやスマートコントラクトといった技術のメリットを享受しながら、仮想通貨に対する利益確定後の投資資金の一時的な避難先としても使用される。


2.3 ステーブルコインの特徴


ボラティリティが高い暗号資産とは異なり、ステーブルコインの価格は安定しているため、日常の決済に利用しやすい。価格が安定しているため、資産の避難先としても利用しやすい。例えば、インフレにより法定通貨の価値下落が続いた場合に、資産の避難先としてドルと同様にステーブルコインが選択されるケースも考えられる。


法定通貨での国際送金と比べて短時間かつ低コストで海外送金が可能。


2.4 ステーブルコインの種類


ステーブルコインは、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型(アルゴリズム)」の主に3種類に分けられる。


・法定通貨担保型


法定通貨担保型とは、法定通貨を担保に発行されるステーブルコインで、価格はペッグされた法定通貨とほぼ同じとなり、担保となった法定通貨の価格に連動させることでボラティリティを抑える。基本的には担保となる法定通貨とステーブルコインは、1:1の交換レートとなる。現在流通しているほとんどのステーブルコインが法定通貨担保型だ。法定通貨担保型のステーブルコインは、他のステーブルコインよりも価格が安定している点や、法定通貨を担保にすることで自由に発行することができる点も特徴だ。


法定通貨担保型では、21年3月時点の時価総額では、テザー(USDT、約380億ドル)、USDコイン(USDC、約93億ドル)、トゥルーUSD(TUSD、約2億8000万ドル)となっている。フェイスブックが主導して計画を進めていることで話題のDiem(旧Libra)も、法定通貨担保型である。


法定通貨担保型は、当然ながらステーブルコインの時価総額と担保資産の総額は等しくなることから、上記では、テザー発行には約380億ドルが担保として預託されているのだ。

法定通貨担保型のリスクとしては、ステーブルコインの発行や管理を担う組織の発行体リスク、すなわち倒産リスクが挙げられる。USDTの場合、発行や管理をテザー社が行なっているため、テザー社に不正などの問題が起きるリスクをゼロにはできないが、法定通貨担保型のステーブルコインは、各々発行全体の99.5%が米ドルを担保に発行されている。


・暗号資産担保型


暗号資産を担保に発行されたステーブルコインで、担保となった暗号資産に価格を連動させることでボラティリティを抑える仕組みとなっている。暗号資産担保型の特徴は、法定通貨担保型と違い特定の管理者が存在しない点で、そのためDeFi市場などとの相性が良く、スマートコントラクトでの制御が可能となっている。

暗号資産担保型の代表通貨としてはダイ(DAI)があげられる。イーサリアム(ETH)やベーシック・アテンション・トークン(BAT)、USDコイン(USDC)、トゥルーUSD(TUSD)、コンパウンド(COMP)などの暗号資産が担保として使用可能だ。

暗号資産担保型のリスクとしては、価格を安定させることの難しさがある。ステーブルコインの目的は、暗号資産のボラティリティ抑制するためだが、その暗号資産を担保に発行されるステーブルコインの価格安定は、非常に難しい仕組みである。そのため、仮想通貨担保型のステーブルコインの事例としては、DAI以外に目立ったものは登場していない。


・無担保型(アルゴリズム)


担保資産を付けず発行されるステーブルコインで、予め組み込まれたアルゴリズムによってボラティリティを抑え価格の安定を図る仕組みだ。無担保型のステーブルコインは、各国の中央銀行が、経済情勢などを考慮しながら市場で流通する通貨供給量を調節しているように。市場の需給バランスに応じてコインの発行やバーン(使用できないように焼却すること)することにより、価格を安定化させる機能がある。

無担保型のリスクは、発行前に定めたアルゴリズムによって全てが制御されるため、実際に想定された価格変動が実現できるのか、不透明要素が多い点だ。

3. イールドファーミング


3.1 イールドファーミングとは


別名「流動性マイニング」とも呼ばれ、DEXや他のDeFiサービスに流動性を提供してネイティブガバナンストークンを受け取る行為。

イールドファーミングとは、レンディングやDEXといったDeFiサービスに暗号資産を預託して流動性を提供する見返りに金利や手数料収入が入手する仕組みで、暗号資産を、DEXのプラットフォームにプールし、当該暗号資産を借りたい人が賃借料を払って暗号資産を借り、支払った金利手数料を貸し手が利回りとして受け取ることができる。DeFiを使うことで管理者の仲介がなく、手数料を支払いなしに金利を受け取ることが可能だ。

イールドファーミングは、流動性供給者が取引所の流動性プールに資産を提供するインセンティブをより高める取引と言える。


3.2 イールドファーミングブームのきっかけ


分散型取引所Compoundは流動性を確保するため、資産を預託した利用者にICOトークンCOMPを配布したことから、利用者が殺到した。流動性を提供すればするほど、イールドファーミングによる手数料収入を獲得できるのだ。COMPの人気もあり、DeFiエコシステム内の資金額合計は、強烈なスピードで増大している。


3.3 イールドファーミングの方法


イールドファーミングは基本的にDEXで以下の手順で進める。

1. トークンのペアを決定

2. 「pool」ボタンを押下し、トークンをプールする。

3. 「Add Liquidity(流動性の提供)」を押下し、トークンを2つ選択する。

4. トークンの数量を入力

5. 取引を送信

6. 取引承認後、「Supply」を押下する

7. 取引を送信

8. Poolページで預託したトークンが反映されているかを確認

(*サービスにより内容や順番が異なる)



3.3 イールドファーミングのリスク


イールドファーミングに内在する以下のリスクがある。


・変動損失(impermanent loss)


変動損失(impermanent loss)とは、単純にホールドした際とプールに暗号資産を預託した時との価格の変動で生じた損失。


・スリッページ


スリッページ(slippage)とは、自ら発注した価格と実際の約定価格との価格差。FXなどの他の金融商品でも見られるが、イールドファーミングもスリッページのリスクを考慮する必要がある。


・ハッキング及び詐欺


2016年にスマートコントラクトの脆弱性を攻撃されてハッキングされた「The DAO事件」が勃発し、多額のトークンが盗まれる事件が生じた。DEXは中央管理者が不在な為、個々のDEXのシステムの脆弱性や発生頻度など、中央型取引所に比べてもより留意する必要がある。分散型取引所は取引所に支払う手数料等のコスト負担が無い分、リスクも存在することを理解する必要したい。


4 取引所の流動性:AMM(Automated Market Maker)


4.1 AMM(自動化マーケットメーカー)とは


自動化されたアルゴリズム取引によってトークンの取引市場に流動性を提供するプロトコルである。分散型取引所では、自動化された(※1)マーケットメーカーは、トークンのいわゆる流動性プールを作成するスマートコントラクトを意味しており、オーダーブックではなくアルゴリズムで自動取引される。AMMは、あらかじめ設定された数式に基づきトークン価格を決定する。これらの流動性プールに資金を供給するために使用される資本は、流動性を提供する見返りに、プロトコルによって得られる手数料の何パーセントかを受け取る分散型取引所のユーザーによってクラウドファンディングされる。


4.2 AMMの仕組み


オーダーブック、オーダーマッチングシステム、マーケットメーカーによる取引執行ではなく、分散型取引所は、自動化されたマーケットメーカー及びスマートコントラクトに従った、トークンの流動性プールを作成し、数式に従って価格を設定している。


AMMベースのDEXでは、ユーザーはスマートコントラクトを通じて自動的にトークンを流動性プールに送金、通貨ペアの相手トークンと交換される。トークン間の交換比率は、Uniswapの場合、予め定義された数式でプール内のトークン量を反映されながら、自動計算される。


(※1)マーケットメイク

マーケットメイクとは、暗号資産であれば、利用者の顧客の買いたい、売りたいのニーズに対して希望する枚数での価格を同時に提示し取引成立を可能にすることで、これを市場に流動性を提供すると言う。利用者が金融資産を購入する中央集権型暗号通貨取引所では、オーダーブックとオーダーマッチングシステムを使用して、買い板と売り板をマッチングさせる。オーダーブックは、リアルタイムの電子記録を維持し、暗号通貨の購入、販売の全ての注文を表示する。注文照合システムは、注文帳に記録された注文を照合して決済する特殊なソフトウェアプロトコルだ。中央集権型取引所は、金融機関出身のトレーダーを採用し、取引所にスプレッドを乗せたアスク、ビッド提供している。これらマーケットメーカーは常に複数価格で資産の売買を提案しているので、ユーザーは常に取引を成立させることができるのだ。このように取引所に流動性を提供するプロセスをマーケットメイクといい、このサービスの提供者をマーケットメーカーと呼ぶ。


5 Layer2(Polygon)


Layer2(以下、L2と表記)は、DeFiのプラットフォームであるイーサリアムの取引処理の向上と高騰しているイーサリウムの手数料削減を目的としたプロジェクトだ。L1までの取引はブロックチェーン上で行われるが、L2はオフチェーン(基盤としたブロックチェーン以外のシステム)での取引を行う。チェーンが異なるため、L2では、イーサリアムウォレットからL2対応のウォレットに移動後、取引を行うことになる。L2はイーサリアムのエコシステムで展開されるので、イーサリアムチェーン上で作られたもの(ユニスワップなど)に適用される。L2の1つの代表として、Polygonを紹介する。


5.1 Polygonとは


イーサリアムのガス代が高騰し、optimistic-rollupなどのサイドチェーンでの様々な拡張性を実現するソリューションが求められている。急拡大しているのがPolygonで、イーサリアム上のスマートコントラクトに MATIC トークンをステーキングするバリデーターに維持されるPoSコンセンサスメカニズムでセキュリティを確保している。


5.2 Polygonの構成とインセンティブ


Polygonは、ブロック生成スピードがとても速く(平均2.1秒)、特筆すべきポイントは、イーサリアムのDeFiアプリが移行しており、TVLが50億ドルに到達していることだ。マネー・レゴと呼ばれるDeFiの可能性を実現する「コンポーザビリティ」を備えている。 Polygon上での各DeFiトークンの(※1)TVLは、Aaveは26億ドル、Sushiswapが7億ドル、Curve5.5億ドルなど、既に複数銘柄が稼働している。利用者はAaveで暗号資産を借りて、イールドファームやロングショートのレバレッジを行い、使用量に応じてMATIC(Polygonのトークン)を報酬として獲得できるのだ。


(※1)TVL

TVL(Total value locked)、DeFiスマートコントラクトにロックされた暗号資産の総資産額を指す。分散型金融(DeFi)を語る上で欠かせない指標の一つだ。例えばブロックチェーン上に複数のDeFiプロトコルが存在した場合、それぞれのDeFiプロトコルの担保として預託された暗号資産、借りた暗号資産など総量をドルベースで総資産額として合算した計算結果になる。借りたトークンをさらに貸し出しした場合などの数字も含まれる。2021年6月1日時点でのTVLは$65.12B(約7.13兆円)となっている。




(出典:DEFI PULSE)