2021年NFTカオスマップ(業界地図)と事例紹介②

はじめに


 前回の記事は<NFT発行>について、各分野の代表例を挙げながら説明した。本稿はその続きとして、<NFT流通><NFTインフラ>分野のケースを紹介・説明する。




<NFT流通>


「NFT流通」カテゴリーは、主にNFT取引プラットフォーム又はマーケットプレイスを指す。このようなプラットフォームでは、「ブロックチェーンに記録される固有情報 としての非代替性の権利証明(NFT)」と「暗号資産」を交換できる。NFT取引プラットフォームで行われるのは、①NFTを作成・発行する、②作成したNFTを販売する、③NFTを購入する、④購入したNFTを再販する、という4つである。それらによって、個人投資家は一般に、①NFTアイテムの交換、②NFTアイテムの売買、さらに③NFTをローンの担保として提供すること、④NFTインデックスファンドを買うこと、で投資活動を行う。「NFT流通」では、NFT取引を行う際に、各プラットフォームを取引対象NFTの種類で分け、「全般」「アート」「音楽」「ビデオ」「その他」での代表例を挙げながら説明する。


1.全般:OpenSea

2018 年に設立された OpenSea は、業界をリードする分散型 NFT 取引所 (Decentralized Exchange、DEX) として位置付けられ、P2Pのイーサリアム非代替性トークン (NFT) 取引を提供する。総合プラットフォームでは、アートワークNFT、ゲームNFTなど、多種多様なデジタルアイテムを表すNFTトークンを販売している。ユーザーはOpenSeaのプラットフォーム上でNFTの作成・取引を実行できる。2021 年の春、OpenSeaはa16zなどを中心に数千万ドルの資金調達を完了し、近い将来独自のトークンを発行する可能性がある。



OpenSea ホームページ



 現在、OpenSeaは業界最大のNFT取引市場であり、プラットフォーム上には Gods UnchainedやCryptopinksなどの有名な NFT 作品や、Axie Infinity や CryptoKittiesなどの収集可能なゲームを含む700を超える商品がある。商品には複数のカテゴリーがあることに加え、完全にトークン化又はデジタル化できる特徴を持つ。所有権証明と取引記録がブロックチェーンに永久に保存されるため、ユーザーは支払いが完了すると合法的な所有者になれる。また物理的なアイテムとは異なり、ブロックチェーンに記録されたデジタルアイテムが盗難され転売されるというリスクがない。



2.アート:Nifty Gateway

 Nifty Gateway は、Gemini暗号資産取引所に基づく規制される非代替性トークン (NFT) のマーケットプレイスである。Nifty Gatewayでは、ユーザーはクレジットカードを使用してNFTを自由に購入でき、NFTを販売する時に銀行口座に直接換金できる。これにより、NFTアートワークの取引に参加する新規ユーザーの熱が大幅に高まった。Nifty Gatewayの場合、ユーザーはメールアドレスを登録するだけで NFT 取引を開始できる。最近、Nifty Gatewayは、イーサリアムのユーザーとクレジットカードのユーザーを高速の取引環境に置き、ユーザーが購入したアイテムを1秒以内に受け取ることができるように、Prepaid ETHもローンチした。




NiftyGateway ホームページ


 Nifty Gateway は、有名人と協力してホットトピックを発見し、トークン化された限定グッズを作成してリリースする。代表的な作品には、元UFC女子ライト級チャンピオンのCris Cyborgと写真家Lyle Owerkoとのコラボレーションのコレクションがある。2021年、Nifty Gatewayは、「リック&モーティ(Rick & Morty)」のクリエーターがイーサリアムでNFTアートワークを販売する予定を発表した。



3.音楽:AUDIUS

 Audius は、Roneil Rumburg と Ranidu Lankage によって作成されたブロックチェーンベースの音楽共有プラットフォームで、音楽ストリーミングサービスの余分なプロセスとコストを取り除き、アーティストが自分の作品の正当な分配収入を直接取得できるようにすることを目的としている。具体的には、プラットフォームのユーザーは、お金を使って Audius トークンを購入したり、広告を見てトークンを獲得できる。ユーザーが音楽ライブラリから曲を聴くと、ブロックチェーンウォレットは自動的にトークンで支払い( 1 セント未満でもできる)を行う。そのうち、収入の約85%はアーティストが取得し、残りの部分は曲の提供者とソフトウェアの開発者が取得する。これに対して、当該業界における他の一部のストリーミング音楽サービス プロバイダーは、アーティストに 70% の収益分配しか提供できていない。



4.ビデオ:Theta


 


 Theta Network は、ブロックチェーン技術を利用した最先端のビデオ配信ネットワークである。Thetaを使用すると、ユーザーは動画コンテンツを同時に視聴でき、同じコンテンツを視聴している他のユーザーに動画を中継することでトークン報酬を獲得できる。他のシェアリングエコノミーモデルと同様に、ユーザーは、自分の余った帯域幅とコンピューティングリソースを自発的に提供して、任意のPC、モバイル、デバイス、又はスマートTVでTheta Networkに貢献すると、報酬を獲得する。


 ビデオプラットフォームの場合、Thetaをビデオ配信スタックに統合することで、ビデオ配信のコストを削減し、視聴者の関与を深め、収益を増やすことができる。ビデオ配信インフラへの支出を減らし、ユーザーへの報酬を増やすことで、Theta対応のビデオプラットフォームはユーザーを拡大し、市場シェアを獲得できる。


 Thetaのブロックチェーンメインネットは、チューリング完全のスマートコントラクトのサポートを可能にする。スマートコントラクトは、Theta Network上に構築された Dapp によるまったく新しいユーザーエクスペリエンスとアトリビューションモデルを構築した。例えば、Theta Networkでスマートコントラクトを活用することで、完全にデジタル化されたアイテム所有権、革新的な消費モデル、透明な印税分配、信頼に依存しないクラウドファンディングなどを実現できる。これにより、ビデオやデータ配信のコア機能を補完する社会的及び経済的インタラクティブ性のあるレイヤーが提供され、プラットフォームユーザーのエンゲージメントと維持が大幅に向上する。


 Theta Network は、デュアルトークン(二種類のトークンを利用する)を特徴としている:①Thetaトークン (THETA) は、Thetaプロトコルのガバナンストークンである。THETAは、供給量(10億枚)が固定で、バリデーターまたはガーディアンノードとしてステークするために使用され、Theta Networkのブロック生成とプロトコルガバナンスに貢献する。ノードをステーキングして実行することにより、ユーザーはステーキング量に比例して、新たに供給されるTFUEL を獲得する。②Theta Fuel (TFUEL) は、  Theta プロトコルの運用トークンである。TFUEL は、ビデオストリームを共有するためのエッジノードリレーラーへの支払いや、スマートコントラクトの使用などのオンチェーン操作に使用される。中継者は、ネットワーク上の他のユーザーに中継するすべてのビデオストリームに対してTFUELを獲得する。Theta Fuelはプロトコルの「Gas」と考えることができる。初期のThetaブロックチェーンには 50 億TFUELが発行され、プロトコルレベルで設定された固定パーセンテージで毎年供給が増加している。



<NFTインフラ>


 NFTインフラについて、本稿では「NFT開発用のブロックチェーンプラットフォーム」、「トークン等の情報確認用のエクスプローラー」、「NFTの最新情報収集用のメディア」に分けていくつかの支援ツールを説明する。その中で、「NFT開発用のブロックチェーンプラットフォーム」には二つのアプローチがある:①一般的:既存のブロックチェーンに基づいて、提供された開発フレームワークを利用して開発活動を行うこと;②NFT専用独自のブロックチェーンに基づいて開発活動を行うこと。以下は主に「①一般的」のブロックチェーンプラットフォーム例を紹介する。



1.ブロックチェーンプラットフォーム:

 0xcert は NFT 開発用のオープンソースプロトコルであり、アプリケーション開発ツールや高度な統合レイヤーなど、NFTの開発フレームワークを提供する。開発者にとって、0xcertを使用すると、開発時間を節約し、リスクと開発コストを削減できるため、NFTアプリケーションとビジネスモデルの開発に集中できる。もちろん、0xcert は NFTの作成と発行に加えて、NFT検証サービスも提供する。


 0xcertは、0xcertはNFT開発フレームワークを作成することを目的としているオープンソースである。また0xcertは、ブロックチェーン上で非代替性資産を作成、所有、および検証できる。さらに、0xcertプロトコルは、ブロックチェーン上のデジタルまたは有形資産 (ID、教育証明書、ゲーム内のアイテム、家など) を簡単に検証および管理するように設計された、強力なDappsを構築するためのツールとして機能する。0xcertは、Xcert及びその他の非代替性トークンを管理するための一連のオンチェーンおよびオフチェーンルールを含むフレームワークである。


 ZXC ユーティリティトークンは、0xcertインフラで重要な役割を果たす。これらのZXCはイーサリアムERC-20標準に準拠した交換可能なトークンであるので、0xcertプロトコルに基づいて構築されたDappsをサポートするために使用できる。0xcertはコミュニティ主導のオープンソースプロジェクトであるため、分散型ガバナンスモデルを導入することもできる。


 OpenZeppelinは、EVM (イーサリアムの仮想マシンで複雑なアルゴリズムのコードでも実行できる)上に構築されたオープンソースのスマートコントラクト開発ツールであり、開発者がスマートコントラクトを安全に開発および管理できる。OpenZeppelinは、イーサリアムスマートコントラクト言語 Solidity を使用して、すべての EVM及びeWASM ( Eth2 の重要なモジュールであり、CPU 命令セットに近い、より効率的なWASM 命令を使用して、イーサリアム取引実行と取引コントラクト言語の独立性を改善) のクロスプラットフォーム移行をサポートする。OpenZeppelin のコードコンポーネントは、2019年までに 3000 を超えるEthereumプロジェクトで使用されており、180 を超えるコードコントリビューターがいる。


 Zeppelinは多くの一般機能を標準化し、転送制限、ICOなどの機能がOpenZeppelinに基づいて安全かつシンプルに使用できる。例えば、OpenZeppelinのフレームワークを使用すると、最初は数百行のコードが必要だったスマートコントラクトが、今では 14 行だけで済む。

ERC-20とERC-721 は、現在最も多く使用されているイーサリアムトークンの規格である。 ERC-20 は代替可能なトークンの規格であり、ERC-721 は代替不可能なトークンの規格である。両者ともいくつかの限界があるので、 Enjin社のCTOである Witek Radomskiは、それらの限界とEnjinのビジョンを実現する上でのボトルネックを認識していたため、新しい規格 ERC-1155 を開発した。Enjinによって作成された ERC-1155 規格は、従来の規格の利点を組み合わせて、以下の問題点を解決した:


① 既存のトークン規格では、アイテム (例えば、シールド、スキン、ポーションなど) ごとに個別のスマートコントラクトが必要である。現在のビデオゲームには、場合によっては何十万のアイテムがあるが、ゲームスタジオがアイテムごとにスマートコントラクトを作成する場合、非常に高価で管理が難しく、ブロックチェーンが動くのも困難になる。ERC-1155 では、スマートコントラクトで無限にアイテムを生成および管理できる。そのため、ゲームスタジオはプロジェクトの作成、追跡、管理がはるかに簡単になり、さらにGas料金を最大90%節約できる。


② 既存のトークン規格では、アトミックスワップ (仲介者なしで、1つの暗号通貨を別の暗号通貨に交換)を完了するために複数の手順が必要である。取引にアイテムが追加されるたびに、処理プロセス全体でもう 1 つのステップが追加される必要がある。それに対して、ERC-1155は、2ステップだけであらゆるトークンの交換を実現できる。



出所:ERC-1155: The Crypto Item Standard


③ 既存のトークン規格では、バッチ転送機能が制限されている。ERC-1155を使用すると、ユーザーは1回の取引で任意の数のアイテムを複数の受信者に送信できる。



出所:ERC-1155: The Crypto Item Standard


④ 代替可能 (弾薬、木材、銀など) と非代替可能 (ペットの子猫、伝説の車など) のトークンでは、互換性が制限されている。しかし、ビデオゲームでは、両方が必要である。その場合、ERC-1155 を使用すると、代替可能なアイテムと代替不可能なアイテムを一緒に作成、バッチ処理、および転送できるため、互換性と柔軟性が大幅に向上する。


⑤ ERC-1155 では、スマートコントラクト機能を実行する機能が導入されている。トークンが受信されると、スマートコントラクトが実行され、一連の後続の操作がトリガーされる。


2.エクスプローラー:NFTBank


 NFTBankは、資産管理を支援するために、エクスプローラーツールを提供するポートフォリオ及び分析プラットフォームである。NFTBankが取り組んでいるNFTの1つは、イーサリアムプラットフォーム上のビデオゲームーーLeague of Kingdomsである。もう一つは、The Sandboxなどのアプリケーションとともに収集品を探すプレーヤーの支援である(NFTBankプラットフォームを通じて、ユーザーはこれらの散在するNFTを1か所でより効率的に管理できる)。NFTBankのプラットフォームは、イーサリアム及びPolygonネットワーク上の NFT をサポートする。このソフトウェアにより、ユーザーは一度に多数の NFT にアクセスできる。


3.メディア:Non-Fungible

 NonFungible.comは2018年2月にリリースされ、当初はDecentralandのリアルタイム取引を追跡することを目的としていた。このプロジェクトは進化・成長し、今日ではNFTエコシステムの柱の1つとなっている。当該サイトがDaniel Kelly (dafky2000)とGauthier Zuppinger (Zoup)によって開始され、エコシステムの異なるコミュニティ間のリンクを作成し、プロジェクトリーダーとNFTアイテムの消費者の両方にサポートとサービスを提供する。



終わりに


 本稿は弊社で作成したNFTエコシステムのカオスマップについて、カテゴリー別で様々な代表例を紹介した。2017年のNFTアプリケーションの登場から、様々なコンテンツとサービスの出現まで、NFTはいくつかの活用できるアプリケーションシナリオと独自の価値を見つけてきた。 NFTは将来、より良い体験をもたらし、日常生活に欠かせないものになると信じている。


【免責事項】

HashKey DX Researchサービス(以下、「当サービス」とします。)における免責事項は、下記の通りです。

  • 本サービスで提供される文章や画像などにつきましては、無断転載することを禁止します。転載する際には、お問い合わせよりご連絡いただけますよう宜しくお願い致します。

  • 当サービスは著作権や肖像権の侵害を目的としたものではありません。著作権や肖像権に関して問題がございましたら、お問い合わせよりご連絡いただけますよう宜しくお願い致します。

  • 本サービスで提供される情報の内容に関しては万全を期しますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。

  • 本サービスにて提供される内容によって行為から発生した損害について責任を負うものではありません。

  • 利用者が本サービスで提供される市場調査データを用いて行う判断の一切について責任を負うものではありません。



【お問い合わせ】

HashKey DX Research事務局

research@hashkey.jp