2021年NFTカオスマップ(業界地図)と事例紹介①

はじめに


 2021年からNFTの話題性は劇的に盛り上がっている。日本総研のIT動向リサーチによると、2020年末の時点で3億3,803万ドルだったNFTの市場規模は、2021年第一四半期(1~3月)には約15億ドルにまで急成長を遂げている。暗号資産専門メディアサイトのThe Blockのデータによると、取引所の取引量は2021年8月に8億ドル(約881億円)近くに上り、同年7月の2億8400万ドル(約312億円)と比較すると、驚くべき高い数値を記録している。様々な種類のNFTの出現とともに、NFT市場の将来性がみられる。前篇の「話題になったNFTとは何か」は概説として、「NFTとは」、「NFTの特徴」、「なぜNFTが注目されるのか」、「NFTの存在価値」という4つに分けて説明した。本稿はNFT業界のカオスマップを作成して、「NFT流通」「NFTインフラ」「NFT発行」という三つのカテゴリーに分けて、応用例を挙げながらNFTエコシステム内のアプリケーションを説明する。





<NFT発行>


 今まで多くの発行されたNFTはデジタル資産(デジタルアート、ゲームアイテム)の所有権又は特定機能の使用権(一回又は複数回)である。また、クリエイター分類によって、「法人で作成したデジタル資産」と「ユーザーで作成したデジタル資産」に分けられる。前者は、ゲームアイテム・芸術品・IP・アイドルグッズなどの収集価値あるコンテンツが多い。後者の場合は、バーチャルキャラクターとメタバース(metaverse)が多い。

 次に、クリエイティブプラットフォーム (User-Generated Content)・ゲーム・エンターテインメント・ユーティリティの順序で取引量ランキングの上位プロジェクトを紹介する。



1. クリエイティブプラットフォーム (UGC):


 UGCはWeb2.0時代に出現した代表的なWebサービスである。例えば、昔のフォーラム、今のFacebook、TwitterやInstagramである。UGCはユーザーがコンテンツの消費者であり生産者となる。ジャックドーシー氏が投稿した初めてのtweetがオークションで落札されたことからUGCはNFTと相性が良いとみられる。UGCで作成されたNFTはクリエイターの創造性を表す。

CryptoKittiesは一般にゲームとみられているが、特定のシステムルールとランダム性によってユーザーで生成した新しいコンテンツとみることもできる。

 現在、CryptoKittiesはすでに典型的なNFTフォーマットになり、バーチャルキャラクターからメタバースまで、注目されるアイテムが出現している。将来、ゲームなどの分野に融合する可能性が高いだろう。


 CryptoKitties は、イーサリアムブロックチェーン上に構築された収集可能なデジタル猫である。それらはイーサリアムを使用して売買でき、様々な特性を備えた新しい猫を飼育することができる。リリースされた時には、50,000 匹の「Gen 0」猫 (「Clock Cats」とも呼ばれる) がイーサリアムブロックチェーンのスマートコントラクトに保存された。これらの「Clock Cats」は、15 分ごとに1匹の割合でスマートコントラクトを介して自動的に配布される。そして猫はオークションで販売される。


 すべての猫は独特であり、複製したり破壊したりすることはできず、子孫に伝えることができるさまざまな特性を持っている。2 匹のCryptoKittiesが交配して、親の遺伝子の組み合わせである新しい猫を生み出すことができ、新しい遺伝子構造の可能性は無限である。各交配のペアで、1 匹の猫が「お父さん」として行動し、再び繁殖できるようになるまでには回復期間がある。「お母さん」としての猫は子猫を「孵化」させるが、その間は別のペアリングを行うことはできない。CryptoKittyが繁殖できる回数に制限はないが、「交配」すればするほど回復と「妊娠期間」が長くなる。そして猫の価値はその特性に依存し、珍しい遺伝子や老齢の猫は特に高価である。



 Async Artは、イーサリアム上に構築されたプログラム可能な暗号化アートプラットフォームである。2021年2月、Async ArtはLemniscap が率いるシード投資で200万米ドルを受け取ったことを発表した。その他の投資家には、Galaxy Interactive、Signum Growth Capital、Sexy、Blue Wire Capital、Collab+Currency、Inflection、Divergence Ventures、The LAO、Placeholderがいる。


 Async Artの作品は、「Master」と「Layer」の2つの概念で構成されている。「Master」は作品のメインフォームで、複数の「Layer」と組み合わせて1つのNFT作品を構成できる。要するに、1つのMasterのNFTと複数のLayerのNFTを組み合わせることで、1つのNFT作品を作ることができる。dAPP marketの解説によると、マスター(1枚)+レイヤー(最大22枚)を組み合わせることで、見方によって変化するNFTアートが完成していくというイメージになる。さらには所有者が、レイヤーの範囲内で編集(レイヤーの増減)が可能である。


 Asyncアーティストになるために応募したクリエイターは、プログラミングの知識を必要とせず、ただアップロードプロセス中に作品を「Layer」になれない。作品の販売においては、クリエイターが「今すぐ購入」又は「公開オークション」を設定でき、オークションの終了時間はクリエイター自身が決定する。


 Async Artの作品販売による収益は「ポンピング」モデルを採用しており、最初の販売時に10%のサービス料を請求し、残りの90%をアーティストが所有する。二次販売する時、1%のサービス料を請求する。もちろん、クリエイターも10%のロイヤリティーを得ることができる。ただし、カスタマイズされたアートワークの場合、Async Artはサービス料金の20%-30%を請求し、クリエイターは収入の 70%-80%を受け取る。

Sandboxチームは、SAND(プラットフォームの主要なユーティリティトークン)を使用して、プレーヤーがゲーム体験を構築、所有、収益化できるユニークな仮想世界を構築している。SAND所有者は、分散型自律組織 (DAO)を介してプラットフォームのガバナンスに参加することもでき、Sandboxエコシステムの重要な決定について投票権を行使できる。プレーヤーとしては、デジタル資産 (NFT) を作成し、それらをマーケットプレイスにアップロードして、 The Sandbox Game Makerでゲームエクスペリエンスを作成できる。Sandboxは、Atari、Crypto Kitties、Shaun the Sheepを含む50を超えるパートナーシップを確保することで、プレイヤーが所有および作成する、楽しくクリエイティブな「プレイしながら稼ぐ」ゲームプラットフォームを構築している。Sandboxは、真の所有権、デジタル希少性、貨幣化、および相互運用性の利点を提供することにより、暗号通貨と非暗号通貨の両方のゲーム愛好家を惹きつけ、ブロックチェーンを主流のゲームに持ち込むことを目指している。



2. エンタテインメント:

 CapcomとWAXが手を組んで、伝説の格闘ゲームのデジタルコレクションを提供する。コレクターは、Street Fighterのデジタルトレーディングカード (NFT)を購入、販売、および取引できる。各NFTは WAXブロックチェーン上で取引され、本物であると認定され、改ざんすることはできない。

 具体的な操作方法は、まず「Build Cards」のパックを開き、一致する 2 枚の「Build Cards」を組み合わせて、6つのレアレベルのいずれかを持つ新しいカードのロックを解除する。そして「Build Cards」を追加して、そのカードのパワースコアをアップグレードし続ける。パワースコアが 5 に達すると、6 つのレアリティのいずれかの特別なクラスカードをアンロックできる。「Build Cards」は使用すると「燃やされ」、カードの希少性と価値が高まる。Street Fighter NFTはWAX ブロックチェーン技術を使用して構築されているため、多くの市場でデジタルのStreet Fighterカードを売買できるだけでなく、コレクションからカードを即座に取引することもできる。WAXブロックチェーンは、Street Fighterの収集品が本物であると100%検証可能であり、変更や複製ができないことを保証する。そして取引を始めるために必要なのは、WAX Cloud Walletアカウントだけである。


NFTトレーディングカード(NFTトレカ)は、ブロックチェーンで発行されたSKE48のメンバーのNFTを収集および管理できるようにするアプリケーションである。NFTトレカでは暗号資産イーサリアムウォレットの管理機能を搭載しているため、アプリ内でイーサリアムとNFTを安全に管理できる。このアプリは、収集するカードなど、イーサリアムネットワークに記録されているERC721標準資産を安全に管理するのと同時に、NFTトレカの資産は、外部のウェブサイトを通じて譲渡することができる。NFTトレカのオペレーターは、ユーザーの秘密鍵を保存せず(秘密鍵は端末にのみ保持される)、ユーザーが誰かに鍵を教えない限り、ハッキングされることはない。イーサリアムウォレット機能により、ユーザーはBitFlyerやCoincheckなどの60を超える国内および海外の暗号通貨取引所から暗号資産イーサリアムを簡単に受け取ることができる。


 NBA Top Shotはブロックチェーンベースのプラットフォームであり、ファンは公式にライセンスされた番号付きのビデオハイライトを購入、販売、取引できる。2019年7月に全米バスケットボール協会、NBAプレイヤーズアソシエーション、Dapper Labsのからの合弁事業で、NBA Top Shotを作成した。

 NBA Top Shotの仕組み:NBAがハイライトをカットし、Dapper Labs が各ハイライトの販売数と番号を決定する。次に各ハイライトを通常のトレーディングカードのようにデジタルパックに入れ、NBA Top Shotの公式 Web サイトで 9 ドルから 230 ドルの価格でパックを販売する。パックの価格は、ハイライトの品質、スターダムのレベル、およびカードの希少性によって異なる。パックを購入すると、それらのハイライトは暗号化されたウォレットに入れられ、NBA Top Shotマーケットプレイスで「ショーケース」または再販される。


3. ユーティリティ:

 このカテゴリーで、チケットは好例である。チケットは所有権だけではなく、サービスの使用権も含まれる。単なる収集用のNFTとは違い、ユーティリティNFTの所有者はそれを保有・使用する時、長期保存又は投資ではなく、価値のある権利を交換したこと意味する。それによって、消費券、飲食券など、多くの用途があるが、ここでドメインとチケットの2つの典型例を紹介する。

Unstoppable Domains は、ブロックチェーンベースのドメインを構築するサンフランシスコを拠点とする会社である。これらのドメインは、イーサリアムとZilliqaブロックチェーンを利用し、暗号通貨アドレスを人々が読みやすい名前に置き換えている。同社がホームページ上で掲載されたArchitecture overviewにおいて、Crypto Name Service(CNS)というサービスの技術的仕組みを「スマートコントラクトアーキテクチャ」「ドメインの階層と所有権」「ドメイン管理の委任」に分けて紹介した。


 ① スマートコントラクトのアーキテクチャ:CNSの2つのコアコンポーネントは、RegistryとResolverのスマートコントラクトである。Registryは、ドメイン名から所有者アドレス及びResolverアドレスへのマップ (又は辞書) である。一方、Resolver は、ドメイン名からそのドメインに関連付けられたレコード (暗号通貨アドレスなど) へのマップである。



 イーサリアムのメインネットにデプロイされているRegistryスマート コントラクトは1つだけであるが、Resolverスマートコントラクトには多くのバージョンがある。理論的には、すべてのドメインは異なるResolverコントラクトを使用できるが、実際には、ドメインの大半は同じResolverスマートコントラクトインスタンス (上記のResolver 1のような) によって管理される。


 下の図は、CNSのRegistryとResolverがどのように対話するかを示している。



 Registryは、CNSで最も重要なスマートコントラクトで、所有権のルール、ドメインの作成方法を定義し、ERC-721トークンメタデータを提供し、すべてのドメインのメタデータを強化したリストを保存するコントラクトである。Resolverは、ドメイン解析とドメインレコードの保存に使用されるスマートコントラクトを指す。これは、ドメイン所有者が暗号通貨アドレス、チャット ID、分散型WebサイトのIPFSハッシュ値などのデータを保存する場所である。そして、ProxyReader は、解析ライブラリがドメインを解析するために使用するスマート コントラクトである。


②ドメインの階層と所有権:ドメインの所有権は、CNS で様々な形を取ることができる。ドメインは、外部アドレス (秘密鍵でアクセスするアドレス) または内部アドレス (スマートコントラクト) の両方で所有できる。スマートコントラクトでドメインを管理すると、所有権を構造化するための多くの新しい方法が開かれる。例えば、ドメイン管理は複数署名のウォレットによって管理することも、管理者のグループ間で共有することもできる。


③ドメイン管理の委任:CNSでは、ユーザーはドメイン所有者ではなく、アカウントに取引の実行を委任できる。RegistryとResolverのスマートコントラクトは、メタトランザクションを使用するメソッドを実装する。メタトランザクションのユースケースの1つは、Gasを使用するブロックチェーンを他のアカウントに委任することである。これにより、ドメイン所有者は、ドメインと資金を別々のアカウントに保管したり、他の人に取引手数料を払ってもらったりすることができる。


 Crypto Ticketsの革新的なプラットフォームは、ブロックチェーン技術に基づいて、イベント主催者と既存のチケットシステムが参加できる透明で分散型のチケット販売システムを作成した。チケットの販売者であろうと、パートナーであろうと、簡単なプロセスでチケットを同社のプラットフォームに統合できる。同社のエコシステムは、時間の流れとお金を最適化しながら、ビジネスに関連するあらゆる領域を統合する。これにより、利用可能な最もスマートなイベント入場方式を顧客に提供する。


4. ゲーム:

 ゲーム業界もNFTと密接に繋がっている。アートやNFTカードゲームだけでなく、一部のオンラインゲームでもNFTを試すことができる。例えば、ゲーム内の武器と鎧のアイテムがNFTとして市場で取引される。ゲームプレイヤーは自分の武器等をアップグレードすることで、レア度が高まり、NFT市場でそれらに高価格で販売することが可能である。

 Axie Infinity は、ポケモンにインスパイアされた世界である。ゲームプレイとエコシステムへの貢献を通じて、誰でもトークンを獲得できる。プレイヤーは、ペットのために戦い、またペットを収集し、育て、王国を建設することができる。すべてのアートアセットとAxieの遺伝子データにはサードパーティから簡単にアクセスできるため、コミュニティ開発者はAxie Infinityユニバースで独自のツールとエクスペリエンスを構築できる。Axie は、まだ早期段階にあるが、日次、週次、月次のアクティブユーザー数によってイーサリアムゲームの第 1 位にランクされている。これまで、6,400 ETHを超える収益 (200 万米ドル以上) を生み出している。Axieは楽しいゲームであるが、強力なコミュニティとプレイにより、ソーシャルネットワークとジョブプラットフォームの特性も持っている。Axieと従来のゲームの主な違いは、ブロックチェーンのエコノミー設計が、エコシステムへの貢献に対してプレイヤーに報いるために使用されることである。



おわりに


 Beeple等の有名人の作品をはじめ、NFT市場は活発になっている。NFTの取引量から、デジタルアートとゲームが主流になっていることがみられるが、NFTの本質は唯一無二なものの所有権であるため、コレクション以外にサービスの利用券や現物の交換券、不動産所有権の交換等、様々な使い方が期待されている。本稿は<NFT発行>の代表例を紹介した。次回は<NFT流通><NFTインフラ>を代表例を挙げながらNFT業界地図を詳しく説明する。



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