暗号資産貸借取引

暗号資産貸借取引とは


暗号資産貸借取引とは、暗号資産貸借取引或いは貸暗号資産と呼称されており、貸借取引の対象原資産は暗号資産である。筆者もかつて某四大証券に籍を置き、国内株式を対象原資産として、株券貸借取引にカバードコール(コールオプションの売り、借り手側の買取権行使を設けた契約)の特約権を付したレンディング取引を行っていた。当時1990年代のメガバンクへと収斂されていった都市銀行株並みのボラティリティの高さを誇るのが、BTCを筆頭にETH、 XRPと言った暗号資産のシンボルストックに数えられる銘柄群と言える。特に海外ではETFやデリバティブを付したファンドや公的資金の買いなどの大口需要が強いため、BTCはこれと言った下げ材料が見つからない中、世界的な相場の中心にいる。


1か月、3カ月或いは半年の一定の期間、カウンターに暗号資産を貸し出し、その間、貸借料を得るのが当該取引だ。特に現在新高値を更新中のビットコインは上述のように機関投資家の参入も多く、年内価格のコンセンサス水準に、強気見通しの投資家も多いことから、相場は思うように押さない状況が続き、押し目買いに押し目無しと言ったところ。 


暗号資産貸借取引スキーム図と計算例




【計算例】

貸借条件を次のように設定した場合:

銘柄;BTC、数量;5、貸借期間;3か月、貸借料率年3%

計算式:5×1BTC×0.03×90日×1/365=0.0369863BTC(小数第8以下切捨)


受取貸借料(税金は考慮せず)0.0369863BTCとなり、これに元本分5BTCを加えた5.0369863BTCが、期間満了後の利用客へ受け渡されることになる。


受取貸借料の変動要因


投資家が暗号資産を貸し出すことで受け取れる貸借料の変動要因を記したい。

①期間

②数量

③対象暗号資産のボラティリティ

④対象暗号資産に対する供給と需要のバランス


高レートを得るには、理論上では貸借期間は長ければ長いほどよく、暗号資産のボラティリティは高ければ高いほど良く、需要が供給を上回れる環境であること。勿論、貸借取引を行っている暗号資産交換業者の中でも、BTCのようなメジャー銘柄でも案外レートの違いはあるので、やはり此処はコンペをかけて調査をしてみる必要はある。


借り手である業者サイド(金融機関)の動きも見てみよう。大別すると2つの手法がある。1つは、市場リスクに左右されない形態である。利用客より銘柄、数量、期間の照会があると、再貸出しを前提に他の業者にレートを問い合わせ、顧客へレートを返すやり方だ。仲介業者である金融機関自身は(市場)リスクテイクを行わず、薄張りであっても着実に業務純益を積み重ねて行ける。


もう一つとしては、レンディングで入手した暗号資産を手許に置きながら、金融機関自身が市場リスクを取って自社運用を行う手法だ。例えば(※1)マーケットニュートラル戦略で(※2)デルタアービトラージを行い、BTCのデルタの傾きを消す運用を日々行っている者もあるだろう。この手法は、大きく利益を追える可能性を有しながらも、貸借期間中にボラティリティが縮小し、相場が凪の状態になったとしたら、結果としてマイナスが立つこともあるのだ。このように利用客より暗号資産の貸し出しを受けた業者サイドも様々な選択肢があると言える。


暗号資産貸借取引のメリットとデメリット


暗号資産はそれ自体、取引所の分別保管や自らのウォレットに置いていても、株式のような配当金や株主優待が付与されることはそもそもない(取引所が、顧客の預託暗号資産に対して同一暗号資産や他の新規暗号資産のエアードロップ等の特典を付与する業者などはあるが)。「当分売る気はない」、「長期保有を考えている」、「価格変動を全く気にしない」、こういう向きには、暗号資産貸借取引制度を利用することが、今後の資産形成に際しては、有効な手段のように思われる。貸借料相当分は、専ら暗号資産で支払われることが多く、それをまた貸借元本に組み入れれば、複利効果が期待できるという点がこの取引のメリットと言って良いだろう。


一方、暗号資産貸借取引でのデメリットは、業者によっては途中解約を認めているところも一部にはあるようだが、この貸借取引サービスを提供する殆どの業者は貸借期間中の途中解約を認めていないという点だ。従って、貸借期間中に様々な理由により貸借契約を解約したい、売却したいと申し出たとしても、多くの業者はそれには応じることはないので、そもそも相場を見ながら売却を行いたいような投資家は、この貸借契約は行うべきではなく、この点はどうか十分に注意いただきたい。


もう一点留意しておきたいのは、当該取引は利用者と業者との一般貸借契約にあたるので、仮に貸出先である暗号資産交換業者が倒産といった事態になれば、当該取引による貸し出し暗号資産は分別保管された資産ではない為、(※3)ペイオフ(預金保険制度)の適用外であり、元本の保証は一切ないということだ。従って、貸し手である利用客は、貸借先取引業者の信用リスク(倒産リスク)が顕在化した場合の可能性を十分に念頭に置かねばならないということになる。暗号資産交換業者は、国から登録業者として財務状況等のディスクロージャーを態勢整備の一環として求められており、日頃よりHPなどで、貸出を行う業者の有価証券報告書に記載された財務諸表を確認するなどの情報入手も必要であり、単にレート(貸借料)の優劣のみが、貸出先業者選定時の判断基準ではなく、リスク管理の観点も是非頭に入れておきたい。


貸借取引サービスがこれからもっと発展していくと思っている。保有している暗号資産を生かせるため、金利を狙って試したい方は利用時に①貸借期間中の解約不可、②貸出先の信用リスク(倒産リスク) を留意してください。


(※1)マーケットニュートラルは、ヘッジファンドの代表的な運⽤⼿法の⼀つで、買い建て(ロング)ポジションと売り建て(ショート)ポジションを組み合わせることで、マーケット(市場)全体の価格変動に左右されない安定的な収益確保を⽬指す投資戦略(運⽤⼿法)で、市場中⽴型のロング・ショート戦略を指す。


(※2)デルタアービトラージは、デルタを⽤いたアービトラージ戦略である。デルタとは、対象原資産の価格推移に対するオプション感応度の割合で、デルタの傾きを利⽤したアービトラージ戦略すなわち裁定取引を⾏うことを指す。


(※3)ペイオフとは、預⾦保険制度に加盟している⾦融機関が破綻した場合の、預⾦者保護の⽅法のひとつである「預⾦者への保険⾦の直接⽀払い(ペイオフ⽅式)」のことを⾔う。取扱⾦融機関が破綻し、かつペイオフ⽅式が適⽤された場合は、⼀定額まで払い戻しをすることになる。



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