2021/06/30
1.分散型金融(DeFi)とは?
分散型金融(Decentralized Finance、以下DeFiと表記)とは、ブロックチェーンのネットワーク上に構築されて、動作する金融システムの総称である。
「分散型金融」という言葉は、オープンソースでパーミッションレス(承認を得ることなく)な透明性のある金融サービスを作ろうとする動きを指すこともある。目的は、誰でも利用可能で、中央管理者がいないエコシステムの構築だ。ユーザーは、(※1)P2P方式の分散型アプリケーション(以下、(※2)Dappsと表記)を通して金融システムにアクセスすることが可能になり、ユーザー自身が資産を管理できる。
DeFiの主なメリットは、容易にアクセスできる金融サービスを作れることだ。これは特に、現在の金融システムを利用できない人にとって大きなメリットだ。また、モジュール化したフレームワークで構築できることも特長として挙げられる。パブリックブロックチェーンを利用した互換性のあるDeFiのシステムは、新しい金融市場や製品、サービスを生み出す可能性を秘めている。
(※1)「Peer-to-Peer」の略称で、不特定多数の端末(スマホなど)がサーバを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有できる通信技術、またはソフトウェアのことを指す。「Peer」には、「対等な立場で情報共有を行う端末」という意味があり、ネットワークに接続している端末を「ノード」と呼ぶ。それらP2P技術を用いて、ノードが接続し合っているネットワークを、P2Pネットワークと言う。
(※2)Dapps(ダップス)とは、 ブロックチェーン 上でスマートコントラクトを利用することで実現できるアプリケーションを指す。 現在、数多くの分野でDappsが開発され始めており、次世代型のソフトウェアとして注目を集めている。
2.DeFiの特徴
ブロックチェーン上に存在する金融システムとしてはビットコインなどの暗号資産の他、分散型取引所(以下、DEXと表記)やレンディングシステムなどがある。それら分散型金融に分類されるサービスの特徴は、以下の通りだ。
- 中央管理者不在
既存金融システムでは、銀行、証券、保険会社などが取引の当事者あるいは取引者間の仲介者として、信用保証や定められた法規制に基づき取引を成立させている。
分散型金融ではその役割をブロックチェーンとスマートコントラクトが担い、金融機関や特定の企業、個人の管理者が存在していない。そのため、管理費が大きく削減され、取引手数料が安価になる。
- システムが停止しない
分散型金融はブロックチェーン上のDappsで実行されており、ブロックチェーン(取引のデータベース)が分散型なので、取引処理が停止することはない。アプリケーション自体は中央集権型のクラウドサーバに依存するが、今後は分散型ストレージのIPFSや分散型クラウドコンピューティングのDfinityを利用したうえ、完全な分散型のDappsを構築できるのではないかと期待する。
- 誰でも利用できる
既存金融システムは、取引開始に際してKYCが行われ、一定以上の収入や職業などの属性が求められる。公開されたブロックチェーン上で動作するDappsは、ネットワークにアクセス可能な人は誰でもこのシステムを利用できるため、金融システムに触れることができなかった人達にも、金融を解放した。
- 検閲されない
分散型金融の取引データは暗号化されており、システムの停止や改変も企業や個人の思惑で行うことはほぼ不可能なため、利用者個人の特定や取引の取消などを妨害するといった検閲行為は困難である。
- 改ざん不可能
分散型金融で扱われる取引等の記録は、ブロックチェーンに書き込まれるため、事実上、記載済みの記録改ざんは他の参加者全ての同意を得ることが必要になるため、多大なコストからブロックチェーンに保管されている分散型金融の記録の改ざんは不可能だ。
- サービスリリースが速い
分散型金融ではシステムがオープンソースのため、汎用性のあるシステムを利用した新たなシステム開発することが可能であり、サービスリリースも圧倒的に速い。
- オープンファイナンス
顧客口座の管理を行う中央集権型銀行が用意したAPIを通して銀行の金融データにアクセス可能なシステムを、オープンバンキングと呼ぶ。この活用により、銀行と他の金融サービス企業の間に、口座情報をはじめとするデータのネットワークを構築できる。一方DeFiの場合は、既存インフラから独立し、利用者自身が口座(ウォレット)管理をするので、同じブロックチェーン上のDeFiサービスであれば1つの口座(ウォレット)で、複数の全てにアクセス可能となることからオープンファイナンスと呼ばれる。
3.DeFiのメリット・デメリット
3.1 Defiのメリット
現状のDeFiは殆どが暗号資産の運用に利用されているが、利用者の視点から見ると、中央型の暗号資産サービスと比べて、下記のメリットがある
・サービスの利便性
中央集権型の取引所を利用する場合、口座開設など手続きがかなり複雑だ。一方DeFiでは、ウォレットを保有してさえいれば、身分証明が不要で、簡単に口座開設が可能だ。また、伝統的金融はシステム化されてないサービスもある一方で、DeFiは全てのサービスがインターネットにアクセスできれば、利用可能だ。従って、金融機関のサービスを利用できない低所得者層の人でも容易にDeFiにアクセスができて、世界中の誰もが24時間、金融サービスを利用可能だ。また、DeFiでは中央集権型の金融機関が提供するシステムの利用がないため、利用者による運営元への手数料負担が生じない。
・財産の安全性
中央集権型取引所に見られるような取引所の倒産やハッキングによる被害のリスクがなく、金融サービスの取引データはブロックチェーン上に記録され、莫大な数のノードに 共有されるため、特定の誰かがサービスの検閲や中止を行うことは不可能。
・サービスの安定性
DeFiの基盤は予め構築されており、より安全にサービスを開始できる。また、アプリケーションのプログラムがオープンソースであるため、必然的に不正等のプログラムを組めない。
・取引手続きの自動化
自動化によって、人件費が大幅に削減可能だ。また、業務リスク防止に対する投資がいらない。
・システム(スマートコントラクト)がブロックチェーン上で稼働
自社でシステムを運用しない、サイバー攻撃の対応の必要もない。
運営側は金融機能のスマートコントラクトの設計と開発に専念できる。
3.2DeFiのデメリット
・問い合わせ先がなく全ての行為が自己責任
運営元が存在しないのでサービスのサポートを受けられない。DEXがハッキング被害を受けるリスクは低いと考えられるが、完全にゼロとは言い切れず、仮にハッキングを受けたりや、誤ったシステム操作を行って、暗号資産を誤送金してしまうと、二度と戻ってこない。損害を被っても一切保証されない。
・運営元不在により信頼性の担保がない
アプリケーションのソースコードが公開されているが、運営元が無いためシステムの信頼性を担保してくれる第三者機関が無く、詐欺まがいのサービスや十分なセキュリティ対策が行われない可能性がある。
・イーサリアム送金手数料の高騰
DeFiが注目されたことで、イーサリアム(ETH)の旺盛な売買を招き、ガス単価が急騰している。またDeFiの取引手数料はスマートコントラクトの複雑さにより、消費されるガスも増加することから、一般の取引と比べてDeFiでの取引の手数料が膨大になりやすい。この手数料高騰問題を技術的にクリアして、DeFiの利便性を確保する必要がある。
・マネーロンダリングおよびテロなど不正供与資金リスク
KYCや本人確認が行われないことから、知らずに犯罪性資金やマネロンリスクのある相手と取引を行ってしまうリスクがある。
・法規制のリスク
各国によるICOに対する規制のように今後法規制の対象となる可能性は十分あり得る。